iDeCo改正、令和8年はこう変わる──知っておきたい3つのポイント
「老後資金の備えとしてiDeCoを始めよう」と考えている人は多いでしょう。実際、iDeCoは掛金の所得控除・運用益非課税・受取時の税制優遇という“トリプルメリット”が魅力です。しかし、制度設計や税制ルールは刻々と変化しています。令和8年(2026年)4月から予定されている改正案を整理しておきましょう。制度改正を知らずに利用すると、せっかくの優遇が“思わぬ落とし穴”に変わる可能性があります。
① 加入可能年齢がさらに拡大へ
まず注目すべきは「加入可能年齢」の引き上げです。現在、iDeCoの加入限度年齢は60歳または65歳など諸条件がありましたが、改正案では70歳未満までの継続拠出が認められる方向が示されています。
つまり、定年後も働き続ける人が増えている現代の働き方に応じて、老後資金づくりの選択肢が後ろ倒しになりにくくなるということです。
ただし「加入できる=すぐに拠出できる」わけではなく、企業年金との兼ね合いや制度間の調整が必要なケースもあります。
② 掛金拠出限度額の引き上げ
次に大切なポイントが「拠出限度額」の引き上げです。令和7年度の税制改正でも既に掛金上限の引き上げが発表されていますが、令和8年以降の制度施行ではさらに幅広く適用される見込みです。具体的には:
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第1号被保険者(自営業者・フリーランス等):月額7.5万円に引き上げ。
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第2号被保険者(会社員・公務員等):企業年金の有無にかかわらず月額拠出枠が約6.2万円まで拡大。
この引き上げにより、「掛金をもっと増やしたい」「老後までの長期運用を重視したい」という人ほど、制度の恩恵が大きくなります。
ただし、掛金を増やせばその分“手元資金が減る”ことになりますので、家計とのバランスは必ず確認してください。
③ 受取時・税制ルールの見直し
拠出時・運用時の優遇だけでなく、受取時の税制ルールにも改正が入ります。特に「退職金+iDeCo一時金」の受取タイミングが影響を受けます。
これまで「iDeCoを先に、一時金で受取ったあと、一定年数を空けて退職金」というパターンでは、「5年ルール」が適用されていましたが、この間隔を10年以上とする改正案が出ています。
つまり、iDeCoの一時金を先に受け取ったあと、5年以内に退職金を受け取ると、退職所得控除が減るなど税制優遇が小さくなるということです。
また、企業型DCとiDeCoの併用に関しても、制度間の重複を防ぐルール(勤続期間の重複など)にも注目が集まっています。基礎知識だけで「iDeCoさえやれば安心」と思ってしまうと、受取時の思わぬ税負担に直面する可能性もあります。
注意すべき「実務ポイント」
これらの改正内容をただ知っておくだけでは不十分。実務や家計で活かすためには以下の点を押さえておきましょう:
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拠出タイミングと受取設計を早めに考える:加入年齢が引き上げられても、長く運用することが有利です。
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掛金を増やすなら、現役時の生活費・非常用資金を確保したうえで。
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「制度改正」は予告通りに実施されるか確認。2026年以降の実施日程には「令和9年から」などの段階的施行も含まれています。
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退職一時金・iDeCo受取・企業年金など、受取時の税制構造を理解しておく。
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制度の“枠”を使うだけで安心せず、運用商品・コスト・配分にもこだわる。
まとめ
令和8年(2026年)以降のiDeCo改正は、加入年齢の拡大・掛金の拡充・受取時ルールの見直しと、制度自体の“使いやすさ”や“活用余地”の拡大を目指しています。ただし、制度変更だけで“資産が勝手に増える”わけではありません。
真に大切なのは、「制度をどう活かすか」。
あなたの働き方・年齢・家族構成・既存の年金制度を踏まえ、早めに設計を始めることが、将来に向けた安定をつくる鍵となります。そして、**制度の概要だけで終わらせず、運用・受取設計・税制をセットで理解・相談できる専門家と向き合うことが、成功への近道です。
まず、拠出限度額が拡充されたのはメリットと言えます。
そして、iDeCoと退職金、どちらを先にもらった方が得かそうでないか、みたいな議論もあります。
ここはいったん、拠出限度額が上がったという点だけ押さえておけばいいかと思います。
あなたの「自分年金づくり」を、制度改正の先取りから始めてみてください。