S&P500とオルカンが売れているかぎり、この国のマネーリテラシーはさらに遅れる

今、日本の個人投資家の間で「S&P500」や「オルカン(全世界株式)」の人気が圧倒的です。eMAXIS Slimシリーズなどを中心に、積立NISAの投資先はこれらで埋め尽くされていると言っても過言ではありません。
この状況を「良いこと」と見る声も多いですが、私はむしろ日本のマネーリテラシーの停滞を象徴していると感じています。
「YouTubeでおすすめされていたから」
実際に相談に来られる方の中にも、「人気の投資信託をそのまま買っている」「YouTubeで紹介されていたから」という理由でS&P500やオルカンに投資している方が少なくありません。
なぜそれを選んだのか、他との比較はしたのか、リスクとリターンをどう見積もったのか。そう尋ねると、答えられない人が大半です。
S&P500やオルカンを「とりあえず買っておけば間違いない」とする風潮は、一見して合理的なように見えて、思考停止型の投資を助長しているのです。
リターンとリスクを本当に見ていますか?
S&P500もオルカンも、確かに過去10年で高いリターンを上げてきました。ですが、それはアメリカの金融緩和とGAFAMの爆発的成長という、特殊な背景によるものです。
今後も同じような成長をする保証はどこにもありません。
また、これらのファンドはリスク(価格のブレ)も決して小さくはありません。リーマンショックやコロナショック時には30%以上の下落を記録しています。にもかかわらず、「リスクが低い」と誤認している方も多く、投資先の中身を正確に理解していない証拠です。ちなみに、これを書いているときのリスクは
「eMAXIS Slim 米国株式(s&p500)」:20~21%
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」:18~19%
これが高いかどうか、リスクを「%」で表記すること、リスクの計算方法なんて自分で勉強されたなんて方いませんよね(^^;)
インデックスのリスクは低く、アクティブのリスクは高い、の「大嘘」
これもよく聞く都市伝説ですね。
両者、そこまで変わりません(^^;)
比べてみたらわかります。
そこまでリスクの低いインデックスやリスクの高いアクティブを見つけたのでしたら参考にしたいので、ぜひ教えてください(^^)/
人気投資信託の裏にある“情報弱者ビジネス”
投資は本来、「なぜ買うか」を自分で考えるものです。ところが今は「みんなが買ってるから安心」「インフルエンサーが勧めていたから」と、他人の判断に便乗する投資家が増えています。
これは、かつての銀行窓販で毎月分配型のファンドを買わされていた時代と、構造的には何も変わっていません。パッシブ投信が主役に変わっただけで、「売れているもの=安心」と思い込むマインドはそのままなのです。
日本のマネーリテラシーを前進させるには
S&P500やオルカンを買うな、と言いたいわけではありません。それが自分で考えたうえで最適解だと判断したなら、それは正解です。とは言え、私はS&P500もオルカンも買っていませんが(^^;)
問題なのは、中身やリスクを理解しないまま、空気で投資をしていることです。
ファンドの比較、リスクの数値化、パフォーマンス指標の理解。こうした作業を経て初めて、投資は「自己責任」と言えるのではないでしょうか。
今後もYouTubeやSNSの影響で「売れている投信」は変化し続けるでしょう。
でも、流行に乗るだけではマネーリテラシーは育ちません。必要なのは、「なぜそれを買うのか」と自分に問い続ける力です。