NISAは万能ではない?見落とされがちな「スイッチング」の落とし穴
NISAが新しくなり、積立可能額の拡大や恒久化といったメリットに注目が集まっています。特に「成長投資枠」と「つみたて投資枠」を併用できる点や、非課税保有限度額が1800万円に拡大されたことで、資産運用初心者にも魅力的に映る制度となりました。
しかし、「このままNISAで完璧!」と思っている方に、ひとつ立ち止まって考えていただきたいポイントがあります。それが「スイッチングの自由度が低い」という根本的な問題です。
スイッチングって何?なぜ重要?
スイッチングとは、保有している投資信託を売却して、別の銘柄へ乗り換えることです。たとえば、今はeMAXIS Slim S&P500を買っているけど、将来的に米国市場に不安を感じたら他の投資信託に変えたい――こういったことは資産運用では当然起こります。
しかし、現状のNISAでは“時価評価額”全体をそのまま別の銘柄に移すこと(完全なスイッチング)はできません。スイッチングではなく、一度「売却」して、新たに「購入」するという流れになります。
ここで落とし穴があります。
スイッチングの制限がもたらす3つのリスク
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非課税枠の再利用ができない
売却してしまうと、その年の非課税枠は減ったまま。再度その枠を使って買い直すことができません。これは長期積立戦略にとって大きなデメリットです。2025年のNISAの改定では「積立てた金額」まではスイッチングを可能にするとのことですが、「時価」ごとスイッチングが不可能である以上、やはり不完全。 -
“気づかぬうちの中期売却”が発生
YouTubeやSNSなどで「今はこの銘柄がいい!」という情報が流れると、eMAXIS Slim系の人気ファンドを乗り換えたくなる人が続出します。しかし、NISAでは柔軟にスイッチできないため、結果として“中期での売却→買い直し”が繰り返され、理想の「超長期投資」ができなくなります。 -
複利効果の阻害
長期運用の一番の武器は“複利”。しかし、運用途中での売却が繰り返されると、複利効果が薄れてしまいます。これは資産形成において致命的です。
人気ファンドの寿命は短い?
いま、eMAXIS Slimシリーズ(S&P500・オルカン)は“神ファンド”のように扱われています。確かに低コスト・シンプル設計という意味では優秀です。ただし、5年後10年後もこの2つが主役とは限りません。例えばですが、S&P500もオルカンも設立は2018年。意外と最近なんです。
となると、今後5年・10年でこれを凌駕するインデックスファンドやアクティブファンドが台頭してくる可能性は極めて高いと考えられます。
すでに一部の投資信託では、たとえば「ある理由」でテスラのような銘柄を組み入れ対象から外しています。市場は常に変化しており、それに応じたファンド選定も必要です。YouTube発信者の推す「王道ファンド」だけを信じていると、変化に対応できなくなるリスクもあります。
解決策は?信頼できる第三者と考えること
NISAは優れた制度ですが、「万能ではない」という理解が大切です。運用の選択肢としてNISAを活用しつつも、制度の限界や時代の変化を前提に、定期的な見直しや長期視点での投資戦略が必要です。
証券アナリストや公認会計士など、金融の専門家と一緒に「長期でブレないポートフォリオ」を考えていくことが、結局は近道です。YouTubeの情報も参考になりますが、最終判断を任せていいかは別問題です。
NISAを“使いこなす”ためにも、表面的な流行だけでなく「制度設計の穴」まで把握する視点を持ちましょう。